読書感想 日本人のための宗教原論 小室直樹 徳間書店 

 

この本17年ほど前に買ったのですが無くしてしまったようでまた購入。

当時は夢中になって読んだものでした。

 

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著者は京大卒で東大法学博士の奇人。

法社会学・比較宗教学。・宗教社会学など多岐にわたって研究。

立川談志が尊敬した「大先生」です。

一時期テレビに出ていた宮台真司の学問上の師匠。

 

 小室直樹 - Wikipedia

 

著書「ソビエト帝国の崩壊」で10年以上前にソ連の崩壊を予言していたことから注目を集めました。

 

彼によれば日本人は「宗教音痴」でありそのため「宗教」がどういうものか分からない。その為、外国人の行動が理解できない。

一般的に日本以外では人々は「宗教」に基づいて行動するものであり、そこが理解でき無いとコロンブスやマゼランが現地民を大虐殺した理由など解らない。

 

この本はもちろん「仏教」についても説明されている。一部紹介したい。

 

 

第4章【仏教】は近代社会の先駆けだった

 

この本は非常に難しいのでちょっと気になったところだけ紹介したい。

仏教で一番重要なのは「悟りを開く」とこである。

先祖供養や親孝行することでは無い。

 

悟りを開くということは非常に難しく、お釈迦様でさえ何度も生まれ変わり善行を積んで悟ったと言われている。逆に言えば「悟り」の為には生まれ変わり「輪廻」も存在する。なぜなら「必要だから」。

では何が生まれ変わるのか?みなさん誤解されているが仏教では「魂」の存在は認めない。「絶対に」である。そんなものを認めた途端にその仏教は「偽物」になってしまう。仏教では全ての物は「諸行無常」であり「諸法無我」である。

「絶対的な物」など存在しない。全ては「縁起」によって存在し、「実体が無い」。

全てのものは「仮に」存在していている。

 

「色即是空 空即是色」

色」は、サンスクリット語ではルーパで、目に見えるもの、形づくられたものという意味で、それらは実体として存在せずに時々刻々と変化しているものであり、不変で実体はなく、すなわち「空」である。

 

色即是空 - Wikipedia

 

では魂が無くて何が「輪廻」するのであろう?答えは「阿頼耶識(あらやしき)」である。今風に言えば「無意識」。

仏教で高僧が魂というときは解りやすくするための「譬え」です。神道では魂があり、魂は永遠です)

 しかし阿頼耶識でさえ「時に生じ時に滅する」ものであって実体があるものでは無い。

このことは「般若心経」にも書いてあり「不生不滅」「不垢不浄」「不増不減」とある。阿頼耶識自体は「生じることもなく滅すること」もなく「汚れてもなく清らかでもなく」「増えたり減ったりもしない」。とある。

阿頼耶識自体は善でも悪でも無い。

この世の全ては「有であって有でなく無であって無でない」というのが般若心経の教え。

ちなみに「摩訶般若波羅蜜多心経」は三蔵法師玄奘三蔵)がインドのサンスクリット語から翻訳したと言われています。仏教哲学の精華(結晶)がここにあります。

 

仏教では「六道輪廻」と言って人間は六つの世界を生まれ変わると説かれています。

天上・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄の六つ。

この六つの「苦しみに満ちた世界」を行ったり来たりします。「天界」ですら苦しみがあるのです。この苦しみの生まれ変わりの輪廻を抜けることを「解脱」と言います。

悟りを開けば解脱できる、楽になれるというわけです。

 

天界にも苦しみがある

ここで大切なのは天界にも寿命があるということです。苦しみがある。

仏教では神様、天人(天界に住む人)にも寿命があります。

帝釈天も四天王も梵天ブラフマン)も悟ってはなくて輪廻の苦しみからは逃れられません。悟っていないから煩悩もあり汚れもあり、利己心もあります。

 

仏教では悟りを開いた人が神より上位です。

 

仏教は魂を否定する

 自我は存在するのか、自我の存在をいかにして確かめられるか、これは古来より、哲学の大問題であった。インドの一般哲学者は自我(アートマン)の存在を承認して いるが、仏教では、その存在を否定した。

 

 ・・・人間には、「われ存在す」という自覚のあることが認められていたが、それは〈われ〉が実在することを証明するものではなくて、迷妄にすぎないと考えた。諸々の煩悩が起こるのは、「われ存在す」という思いが根底に存在するからであるというのであった。

 ・・・だから仏教によると、「われが存在する」という自覚は断ぜられるべきものなのである。それは我執のもとであるからである。

 (中村元、インド思想の諸問題から引用。春秋社)

 

これが仏教の蘊奥(奥義)である。

 

中村博士はサンスクリット語パーリ語の大家で仏典の解説や翻訳など著書多数です。

 

中村元 (哲学者) - Wikipedia

 

 

まとめ

天上の神や天人の寿命は一番短くて900万年。それでもやはり老衰もある。

三島由紀夫の小説豊饒の海4部作の4巻「天人五衰」とは「天人が命尽きんとするとき表れる五種の衰亡の相」から来ている。

天人五衰 - Wikipedia

 

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よくツイッターで「坊さんなのに煩悩にまみれている」とご指摘いただく僕ですが天上の神々さえ煩悩があるのに現世の坊さんに煩悩があるのは当然ではないかと思ってしまう。煩悩がなくなったら欲も無く人間の3大欲求も無くなってしまう。そうなったら死んでしまいます。

もちろん欲望をコントロールして精進することは必要ですが。

 

阿頼耶識唯識については難しいのでまた勉強し直して次の機会に書きたいです。