変わったお経 ミリンダ王の問い ミリンダ王問経 をご紹介 坊さんのどうでもいい雑学

今回は私の好きなお経「ミリンダ王問経」をご紹介します。

これは古代インドでのギリシャ人であるメナンドロス一世とインド人であるナーガセーナ長老との問答での対決が描かれたお経です。ちょっと変わってますね。

 

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※メナンドロス一世が描かれたコイン

 

インド哲学ギリシア哲学の対決

メナンドロス一世は紀元前の西北インドギリシャ人によって建てられたヘレニズム王朝の国王。

メナンドロス1世 - Wikipedia

 

かなり学問に自信のある王様だったようです。このメナンドロス王がインド仏教の長老であるネーガセーナと聴衆の前で問答しました。

ナーガは蛇または龍をあらわしセーナは軍隊。「龍の軍隊」という意味です。

この「ナーガセーナ」がタイの「エメラルド仏」を作ったと信じられているそうです。

 

「魂の有無」について

このお経のテーマが「魂の有無」。肉体とは別の魂などという実体の存在を主張するミリンダ王とそんなものを絶対に認めないのが、仏教。

2人の間に論争の火花が散る。

 

「王問うて曰く、

『尊者よ、何人でも、死後また生まれ変わりますか』

『ある者は生まれ変わりますが、ある者は生まれ変わりませぬ』

『それはどういう人ですか』

『罪障ある者は生まれ変わり、罪障なく清浄なる者は生まれ変わりませぬ』」

 

これが初等的ながら仏教の本質をみごとに要約しています。

「生まれ変わり」=輪廻転生するということは罪の証なのです。

 

仏教は死後、六道輪廻と言って6つの世界を生まれ変わり続けると考えます。これは元々インドにあった思想です。

皆さんは死後もまた新しい生があるというとホッとするかもしれません。しかしお釈迦様は「生」そのものを「苦」と考えるので仏教ではで生まれ変わりは嫌なものです。

6つの世界とは天・人間・修羅・畜生・餓鬼・地獄です。これを生まれ変わり続けることを「六道輪廻」と言います。

 

そしてこの生まれ変わりの世界を離れて静かな世界に入ることを「解脱」すると言います。どこかで聞いた言葉ですね(笑)。

 

なぜなら仮に善行を積んで「天界」に生まれ変わっても「神」にも寿命があり永遠ではないからです。一番短い寿命は800万年と言われていて人間からすれば長いですが。

この天上の神が寿命で衰えることを「天人五衰(てんにんごすい)」と言います。

天人五衰 - Wikipedia

 

この言葉は仏教にも詳しかった小説家の三島由紀夫の遺作「豊饒の海」の第4部のタイトルにもなっています。

豊饒の海 - Wikipedia

 

もちろん三島由紀夫も魂の生まれ変わりを否定しています。

 

悟りを開いて解脱をすることが仏教の元々の目的です。先祖供養や厄除けが仏教の目的ではありません。

 

さて解脱するにはどうしたら良いのでしょうか?

2人の対話は続きます。

 

「『尊者は生まれ変わりなさいますか』

『もし私が死するとき、私の心の中に、生に執着して死すれば、生まれ返りましょうが、然らざれば生まれ返りませぬ』

『善哉(なるほど)、尊者よ』」

 

ここからまた2人の問答が続きます。

テーマは「魂の存在を否定する以上罰を受けて輪廻転生する主体は何なのか」に移ります。

 

この輪廻の主体については以前にブログで書いています。「識」である「阿頼耶識」です。魂ではありません。「無意識」である「阿頼耶識」。

無意識ですから生まれ変わっても当然わかりませんね(笑)。

 

まとめ

みなさまお分かりでしょうか?このような議論は既に仏教では散々にされてきた議論です。ただ日本の仏教では重視されて来なかった。

 

当然ながらお釈迦様は解脱されているので生まれ変わりしない。どこかの新興宗教の教祖様になったりしない訳です。だから仏教を学んでいれば「インチキ」と分かる訳です。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。